子どもがぽつりと「しんどい」と言ったとき、ママはすぐに何とかしてあげたくなると思います。
「何があったの?」「誰かに何かされた?」「先生に言おうか?」
心配だからこそ、質問も解決策も次々に出てきます。
でも、子どもが最初に必要としているのは、すぐに答えを出してくれる人ではなく、「ここなら話しても大丈夫」と感じられる相手かもしれません。
まずは、話してくれたことを受け取る
厚生労働省は、子どものこころの不調が気になるとき、親の意見や「こうしてほしい」という思いをいったん脇に置いて、子どもの気持ちに共感しながら聞くことを勧めています。
「しんどい」と言われたら、
「そっか、しんどいんだね」
それだけでもいいのです。
「でも明日は学校に行かないと」「そんなことで気にしなくていいよ」と続ける前に、一度そこで止まってみます。
子どもの言葉を少し返してみる
子どもが「教室にいると疲れる」と言ったら、
「教室にいると疲れるんだね」
と返します。
同じ言葉を返すだけに見えますが、「私はあなたの話を聞いているよ」というメッセージになります。厚生労働省も、子どもが話した内容や、「つらい」「悲しい」「不安」といった感情の言葉を伝え返す方法を紹介しています。
「なぜ?」より「どんな感じ?」
「どうして学校に行けないの?」と聞かれても、子ども自身が理由を分かっていないことがあります。
そんなときは、原因を一つに決める質問より、
- 「朝はどんな感じ?」
- 「学校の中で、少し楽な時間はある?」
- 「一番しんどくなるのは、どんなとき?」
- 「今、私にしてほしいことはある?」
のように、答え方を限定しない聞き方の方が話しやすいことがあります。
話したくないときは、待っていい
声をかけても「別に」「分からない」「話したくない」と言われることがあります。
そこで何度も質問すると、子どもにとって会話そのものが負担になることがあります。
「今は話したくないんだね。話したくなったら聞くよ」と終えてよい場合もあります。
厚生労働省も、子どもが話したがらない場合には別の機会を待つことを案内しています。
話す方法は、言葉だけではない
向かい合って「話して」と言われると難しい子もいます。
散歩をしながら、車の中で、何かを一緒に作りながらの方が話しやすいこともあります。言葉にしにくければ、紙やメッセージで伝える方法もあります。
大切なのは、ママが思う「正しい話し方」に合わせることより、その子が話しやすい方法を探すことです。
聞きながら、すぐに評価しない
子どもの話を聞いていると、「それはあなたも悪かったんじゃない?」「考えすぎだよ」と言いたくなることがあります。
事実関係を確認することが必要な場合はあります。でも、最初に子どもが気持ちを話している段階では、「正しいか、間違っているか」の判定を急がない方が、その後の話につながりやすくなります。
「あなたはそう感じたんだね」と、気持ちを受け取ることと、出来事をどう判断するかは分けて考えられます。
いじめなどの事実を確認するときは、誘導しすぎない
もし、いじめ、暴力、性被害など具体的な出来事が疑われる場合は、「○○君にされたんでしょう?」のように答えを含めた質問を重ねないことも大切です。
2023年の教育心理学年報では、事故やいじめ等が疑われる場面で子どもから事実を聞く方法が検討されています。重大な事実確認は、普段の気持ちを聞く会話とは性質が異なるため、必要に応じて学校や専門機関と連携します。
「秘密にして」と言われたら
子どもが安心して話すには、プライバシーを大切にすることが必要です。
ただし、自傷、他害、自殺、虐待など、子どもの健康や安全に関わる内容は、ママだけの秘密にしておけない場合があります。
そのときは、「あなたを守るために、これは一緒に助けてもらう人に相談したい」と説明して、学校や医療、相談機関など必要な支援につなぎます。
相談先が分からないときは、「困ったときの相談先」を使ってください。
ママへ
子どもが苦しそうなとき、黙って話を聞くことは簡単ではありません。
何とかしたい。元気にしたい。間違った道に行かないようにしたい。ママの中にも、たくさんの気持ちがあります。
うまい言葉が見つからなくても、
「話してくれてありがとう」
「つらかったんだね」
「一緒に考えよう」
そのくらいの言葉から始めていいと思います。
話を聞くことは、その場で問題を解決することではありません。子どもが「一人ではない」と感じられる時間をつくることでもあります。
参考にした主な資料
厚生労働省「話を聞くときのポイント」(2026年9月確認)
仲真紀子・小野瀬雅人「子どもからどう話を聞くか―事故,校則違反,いじめ等が疑われる場合の学校での事実の調査―」教育心理学年報62巻(2023)

